退職後、健康保険の加入先を決める際には、以下の2つの選択肢があります。
- 任意継続保険
- 国民健康保険
どちらも公的な健康保険制度ですが、保険料や給付内容には大きな違いがあります。
私は、前職を退職した際に、任意継続保険と国民健康保険のどちらを選ぶべきか迷いました。
任意継続保険と国民健康保険は、それぞれにメリット・デメリットがあります。
あなたの状況に合った健康保険を選ぶことで、安心して生活を送ることができます。
この記事を参考に、あなたにとって最適な健康保険を選んでください。
国民健康保険と任意継続保険の違いについて
退職を決めたあなたは退職した後の健康保険について
1.国民健康保険に加入する。
2.任意継続保険に加入する。
3.家族の健康保険の扶養に入る。
この中から、選択を行うことになります。
多くの方は「国民健康保険に加入する」か「任意継続保険に加入する」になるのではないでしょうか。
それぞれの保険の基本的な特徴は以下のとおりとなります。
国民健康保険とはなにか
厚生労働省によると
国民健康保険制度は、他の医療保険制度(被用者保険、後期高齢者医療制度)に加入されていない全ての住民の方を対象とした医療保険制度です。
国民健康保険制度について/厚生労働省
都道府県及び市町村(特別区を含む)が保険者となる市町村国保と、業種ごとに組織される国民健康保険組合から構成されております。
任意継続保険とはなにか
全国健康保険協会によると
事業所を退職や労働時間の短縮等によって健康保険(全国健康保険協会管掌健康保険)の被保険者の資格を喪失したときに、一定条件のもとに個人の希望(意思)により、個人で継続して加入できる制度です。
「健康保険の任意継続」とはどのような制度ですか?/全国健康保険協会
項目 | 国民健康保険 | 任意継続保険 |
---|---|---|
加入条件 | 住民票のある都道府県 | 退職した会社の健康保険に加入していたこと |
保険料 | 所得に応じて計算 | 退職した会社の健康保険の保険料に準じる |
給付内容 | 国民健康保険法に基づく給付 | 健康保険法に基づく給付 |
国民健康保険と任意継続保険の加入手続きについて
では、退職したあなたが加入する場合、健康保険の手続きはどうしたら良いのでしょうか?
国民健康保険の加入手続きについて
国民健康保険については、
退職後14日以内に、住んでいる市町村の国民健康保険の窓口で手続きを行う
国民健康保険の加入資格について
国民健康保険の加入資格について/厚生労働省
日本国内に住所を有する方であって、以下のいずれにも該当しない方は、国民健康保険の被保険者となります。
・ 他の医療保険(健康保険)に加入している方、その被扶養者
・ 生活保護を受けている方
・ 後期高齢者医療制度に加入している方
・ 短期滞在在留外国人の方 など
国民健康保険の被保険者となったとき、脱退するときなどは、14日以内に、お住まいの市町村の国民健康保険の窓口(国民健康保険組合の場合は国民健康保険組合の窓口等)まで関係書類を提出する必要があります。提出が必要な書類や申請方法などは、お住まいの都道府県・市町村や国民健康保険組合のホームページ等をご確認ください。
各市町村で必要書類は変わりますが、基本的には
(必要な書類)
・健康保険資格喪失証明書
・本人確認書類
・マイナンバーの確認できる書類
が多いです。
任意継続保険の任意継続加入手続について
任意継続保険については、勤めている会社の健康保険組合に問い合わせ書類を取り寄せ郵送する形となります。
(必要な書類)
・各健康保険組合が作成している申請書
・退職日が確認できる書類(退職日より前に申請書を提出する場合は、申請書に予定日を記入する)
を健康保険組合に郵送で送付します。
任意継続保険の提出期限日は資格喪失日(退職日の翌日等)から20日以内
任意継続保険料の納付期限日は加入している協会によって変わると思いますので、HPで確認が必須です。
ここで、注意なのは任意継続保険の保険料納付が資格喪失日から20日以内となっているケースもあることです。
私の退職時のケースですが
①前職の会社から、退職前に退職時に必要な手続きの一覧が書かれた紙をもらう
②記載された一覧に、健康保険組合のHPアドレスが記載されており、自宅で検索して必要書類を印刷
③必要事項を記載し、健康保険組合に郵送(記録を残したかったので、特定記録で送付)
④健康保険組合から、納付金額の案内とともに納付の払込書が同封された手紙が送付される。
⑤任意継続保険証が届く。
⑥従前の保険証にハサミを入れて、健康保険組合へ郵送(記録を残したかったので、特定記録で送付)
このような流れとなりました。
私の場合、有給休暇の消化と引っ越しがあったため、申請書類をかなり早めに提出しました。
ところが1か月以上経過しても何の音沙汰なし。
任意継続保険料の遅滞があると資格喪失となるので、何かの不備があったのかと思い、問い合わせしたところ退職月の中旬に払込用紙を郵送するとの回答でした。
(この時に、書類を特定記録で送付していたのが功を奏し、健康保険組合に到着していることと到着日を伝え、回答を早めにいただくことができました)
郵便物の転送もかかるといつ払込用紙が到着するのか未定だったので、早めに郵送していただくように依頼。
資格喪失日から20日以内までに、任意継続保険料を支払うことができたので、任意継続保険となることができました。
退職と共に、引っ越しや地元に帰ることを検討されているあなたは、重要な書類は郵便局の窓口で特定記録等の記録を残し、トラブルがあった時にすぐに郵送結果が分かるようにしておいた方がよいです。
国民健康保険料と任意継続保険料はいくら支払うのか
では、退職した際の国民健康保険料と任意継続保険料の保険料額はいくらになるのでしょうか?
国民健康保険料の金額とは
国民健康保険料の金額は各市区町村で定めれており、市町村ごとに支払う保険料額が変わります。
ただし、前年の収入等により保険料を支払うのが難しい場合、減免制度があります。
国民健康保険料(税)の額を算定する際、法令により定められた所得基準を下回る世帯については、被保険者応益割(均等割・平等割)額の7割、5割又は2割を減額する制度があります。
また、子育て世帯の経済的負担軽減の観点から、国・地方の取組として、未就学児の均等割保険料(税)を軽減する制度が令和4年4月から開始されました。
国民健康保険料・保険税の軽減について/厚生労働省
具体的には、未就学児に係る均等割保険料(税)について、その5割が公費により軽減されます。
任意継続保険料はいくらになるのか
会社に勤めていた時は、健康保険料は会社とあなたと半分づつ(折半)で支払っていました。
任意継続を選択した場合、会社が健康保険料を支払わないので、あなたが健康保険料全額を支払うため、在職時の約2倍の健康保険料を支払います。
任意継続保険と国民健康保険どちらが安いのか
では、任意継続保険と国民健康保険どちらが安いのでしょうか?
国民健康保険料が高くなるケース
国民健康保険料は、加入者一人ひとりの前年の1月~12月の所得金額と加入者数をもとに世帯ごとに計算されます。
総所得金額(給与所得や年金所得等)が高いと支払う国民健康保険料額は高くなります。
つまり、収入が多くなるほど、支払う保険料は高くなります。
任意継続保険が高くなるケース
任意継続保険は、退職前の健康保険の標準報酬月額(基本的には4月~6月の3か月間の給与の月平均額)を基に保険料を算出します。
また、保険料率は、住所地を管轄する都道府県が定めており、40歳から64歳の方は介護保険料率が加算されます。
標準報酬月額が高いと支払う任意継続保険料は高くなります。
国民健康保険と任意継続保険のどちらが安くなるのか
国民健康保険と任意継続保険については、
退職時の標準報酬と家族の状況によって変わる
ため、一概にどちらが安くなるとはいえません。
会社からの解雇、会社の倒産など、本人の都合によらない離職の場合、減免制度のある国民健康保険を選択した方が安くなるでしょう。
扶養家族がいる場合は、人数に応じて任意継続保険を選択した方が安くなるケースがあります。
どちらを選択するにしても、
HP等で計算できるサイトがありますので、保険料額を計算した方がよいです。
「税金・社会保障教育」のサイト(https://www.mmea.biz/)で、国民健康保険料額を調べることができます。
国民健康保険料シミュレーション
税金・社会保障教育
国民健康保険料をシミュレーションできる計算機です。シミュレーションを行って計算方法を学びましょう。
国民保険料シミュレーションのサイト(https://www.mmea.biz/simulation/kokuho_calculation/)
また、各健康保険組合や市町村の健康保険組合のサイトでも計算シミュレーションができる場合が多いので、一度検索をしてみるのがオススメです。
一般的には年収500万くらいから任意継続保険にした方が安くなるという見解です。
任意継続保険料と国民健康保険料を計算してみよう
私が支払った保険料からあてはめてみます。
(2023年6月30日退職時の状況)
・加入していた健康保険組合の標準報酬月額が最高限度額が38万円(年収456万円)であった。
・大阪市在住。
・結婚しておらず、一人暮らし。
・扶養家族なし
以上の内容であったため、年収500万円として計算してみます。
(国民健康保険)税金・社会保障教育HPの「健康保険料シミュレーション」で計算。
40歳以上65歳未満
565,200円
(任意継続保険)
40歳以上65歳未満
501,780円
年収500万円で計算した場合、任意継続保険の方が国民健康保険より63,420円安くなります。
その他の年収については以下の通りにまとめました。(大阪市在住。1人暮らし。扶養家族なし)
年収 | 国民健康保険(40歳以上65歳未満) | 任意継続保険(40歳以上65歳未満) |
300万 | 337,100円 | 336,125円 |
400万 | 446,700円 | 439,547円 |
500万 | 565,200円 | 501,780円 |
600万 | 683,600円 | 501,780円 |
私が勤めていた会社の健康保険組合と大阪市の国民健康保険を比較すると、年収が低くても任意継続保険の方が若干安くなりました。
あくまでもこれは一例であり、
健康保険組合の任意継続掛金の計算と各市町村の国民健康保険の掛金の割合で支払う金額は変動します。
参考として、鳥取県の各市の2023年4月から2024年3月までの国民健康保険料の金額をまとめてみました。
鳥取県の場合
(2023年4月~2024年3月までの国民健康保険料)
鳥取県の市 | 年収500万円の国民健康保険の年間保険料 (40歳以上65歳未満) |
鳥取市 | 421,500円 |
倉吉市 | 362,400円 |
米子市 | 489,600円 |
境港市 | 500,100円 |
鳥取県の場合は、年収500万円の場合、国民健康保険料に切り替えた方が安くなりました。
任意継続保険に加入すると2年間支払う必要があるのか
任意継続保険の保険料を支払う期間は、原則2年間です。
ただし、以下の条件に該当する場合、任意継続保険の資格を喪失します。
任意継続被保険者は、下のいずれかの日に資格を喪失します。資格喪失後、すみやかに協会けんぽ支部に保険証を返却してください。
任意継続被保険者の資格喪失日について/協会けんぽ(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/)
- 2年間の期間満了日の翌日
- 保険料が納付されなかった場合、納付期限の翌日
- 適用事業所の被保険者となった日(資格喪失申出書の提出が必要)
- 75歳の誕生日、または後期高齢者医療制度の被保険者となった日(資格喪失申出書の提出が必要)
- 任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出た場合、その申出が受理された日の属する月の翌月1日(資格喪失申出書の提出が必要)
- 死亡した日の翌日(埋葬料(費)支給申請書の提出が必要)
上から5つ目の「任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出た場合」とは2022年1月の改正で新たに加わったもので、
国民健康保険に切り替える等により、任意継続保険を辞めたい場合は
資格喪失申出書を提出し、受理された日の翌月1日から切り替えが可能。
(4月1日に国民健康保険に切り替えたい場合は、3月31日までに健康保険組合の受理が必要)
資格喪失申出書の郵送日ではなく、受理日なので、任意継続を辞めたい月の前月の早めに提出がベストです。
まとめ
退職した際の、国民健康保険と任意継続の違いについてまとめてみました。
支払う保険料は、加入していた健康保険組合と住んでいる市町村の国民健康保険の割合で大きく変わります。
安易に選択を行わず、事前にHPや市役所等の窓口で相談の上、検討するのが良いです。
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